「ヤマトは典型的な2重ヒロインだ」
「近くのヒロインと遠くのヒロインだね」
「ガンダム00劇場版も実は2重ヒロインだ。刹那を眠りから覚ます近くのフェルトと、遠くのマリナ姫だ」
「なるほど」
「こういうヒロインの2重化は旧来のガンダムではあまり見られない」
「なるほど」
「しかし、実は2重じゃないのかもしれない」
「えっ?」
「ティエリアもヒロインとするとむしろすっきり解釈できる」
「ええっ?」
「TVシリーズで女装もしているしね」
「どうすっきり解釈出来るの?」
「いきなり身体がないはずのヒロインが身体を持って助けに来てくれるのは、実はイノセンスと構造が同じなんだ。そのまま最後の謎まで主人公と同行してくれるのもね」
「なるほど」
他者の居るコクピット §
「あとから気付いたことなんだけどさ」
「うん」
「ガンダムあるいは巨大ロボの操縦室というのは、精神的に逃げ込める個室なんだ」
「それで?」
「もちろん、ガンダム00最初の主人公機体であるガンダムエクシアも例外ではない」
「そうだね」
「でもさ。4人のガンダムマイスターと4機のガンダムという構造は劇場版の最終段階では崩れている」
「どういうこと?」
「実は最終決戦に出て行くガンダムは3機でしかない。その代わり、刹那にはティエリアが、ロックオンにはハロ2体が、アレルヤにはマリーが付いてくる。つまり、もともとハロがいたロックオンは例外として、もともとあった個室化がきれいさっぱり否定されている」
「ええっ?」
「1人でコクピットにいたカミーユはおかしくなってしまったが、プルをコクピットに入れていたジュドーはおかしくならなかった対比から言えば、やはり他者の存在は重要なんだろう」
「それってどういうことだろう」
「外に向かって開いたガンダムを作ろうとしたんだろう。というか、開いていることは不特定の客を迎え入れる映画では必須の特徴だ。分かる奴だけ分かればいいという理屈は映画では通用しない」
「でも、開かれていては逃げ込めないよ」
「そうだね。でもその方が健全でいいじゃないか」
「男のティエリアを、いくら女装が似合って可愛いからといってヒロインと見なすのは不健全だと思うけどね」